LLMを使って個人知識ベースを構築・維持するパターン。Karpathyが公開したアイデアファイルであり、自分のLLMエージェントにコピー&ペーストして活用するための設計思想文書。
## 核心的アイデア
- 一般的な[[RAG]]は「クエリ時に都度、生のドキュメントから情報を取得する」方式。知識の蓄積がない。
- RAGとの差異: LLMが**永続的なWikiを段階的に構築・維持する**。ソース追加時にLLMが読み込み、既存Wikiに統合(エンティティページ更新、矛盾の指摘、クロスリファレンス維持)する。
- Wikiは**複利的なアーティファクト**: クロスリファレンスが事前に作られており、矛盾はフラグされ、全ソースを反映した合成が既にある。
- ユーザーはソーシング・探索・質問に注力し、LLMがメモの要約・クロスリファレンス・ファイリングを担う。
- 実践: [[Obsidian]]を片側に、LLMエージェントを反対側に開き、LLMが編集→Obsidianでリアルタイムに閲覧。ObsidianがIDE、LLMがプログラマー、WikiがCodebaseという関係性。
## 適用例
- **個人**: 目標・健康・自己改善のトラッキング。日記・記事・ポッドキャストメモを構造化した自己像として蓄積。
- **研究**: 数週間〜数ヶ月にわたるトピック探索。論文・記事・レポートから包括的なWikiを段階的構築。
- **読書**: 各章をファイリングしながら読み進め、登場人物・テーマ・プロットスレッドのページを構築。Tolkien Gatewayのようなファンウィキを個人で構築可能。
- **業務/チーム**: Slackスレッド・会議議事録・プロジェクト文書・顧客コールを自動的にWikiへ統合。
- 競合分析・デューデリジェンス・旅行計画・講義ノート・趣味の深堀りにも応用可能。
## アーキテクチャ
3層構造:
1. **生ソース層**: 記事・論文・画像・データファイル。不変。LLMは読み取りのみで変更しない。唯一の信頼できる情報源。
2. **Wikiレイヤー**: LLMが生成・更新するmarkdownファイル群。エンティティページ・概念ページ・比較・概要・合成。LLMが完全に所有する。
3. **スキーマ**: `CLAUDE.md`や`AGENTS.md`など、Wikiの構造・規約・ワークフローを定義するキー設定ファイル。LLMとユーザーが共進化させる。
## オペレーション
- **Ingest**: ソースを投入し、LLMに処理させる。サマリーページ作成→インデックス更新→関連エンティティ/概念ページ更新→ログ追記。1ソースで10〜15ページに影響する。バッチ一括取り込みも可能だが、個別取り込みで品質を保つのが推奨。
- **Query**: Wikiに対し質問。LLMが関連ページを検索・読み込み・引用付き回答を生成。回答形式はmarkdownページ・比較表・[[Marp]]スライド・matplotlibグラフ・キャンバスなど多様。優れた回答はWikiに新ページとして格納可能(知識の複利化)。
- **Lint**: 定期的なヘルスチェック。矛盾・陳腐化・孤立ページ・未作成の概念ページ・クロスリファレンス漏れ・データギャップを検出。
## インデックスとログ
- **index.md**: コンテンツ指向カタログ。全ページのリンク・1行サマリー・オプションメタデータ(日付・ソース数)。クエリ時にLLMが最初に読む。~100ソース・数百ページ規模ではembeddingベースRAGインフラが不要。
- **log.md**: 時系列の追記専用ログ。`## [2026-04-02] ingest | Article Title`形式でgrepパース可能(`grep "^## \[" log.md | tail -5`で最新5件取得)。
## CLIツール
- **qmd**: ローカルmarkdown向け検索エンジン。BM25/ベクトルハイブリッド検索+LLMリランキング、完全オンデバイス。CLI・MCPサーバー両対応。Wikiが大規模化した際に有用。
## Tips
- **Obsidian Web Clipper**: ブラウザ拡張でウェブ記事をmarkdownに変換。ソース収集に有用。
- **画像のローカル保存**: `raw/assets/`に保存することで、LLMが直接参照可能。ただしLLMはインライン画像付きmarkdownを1パスで読めないため、テキスト読み込み後に画像を個別参照するワークフローが必要。
- **グラフビュー**: WikiのHub・孤立ページの可視化に最適。
- **Dataview**: フロントマターのYAMLクエリを動的テーブル・リストで表示。
- WikiはただのGitリポジトリ(markdownファイル群)。バージョン管理・ブランチ・コラボレーションが無料で使える。
## なぜ機能するか
- 知識ベース維持の困難さはブックキーピング(クロスリファレンス更新・サマリー保守・矛盾メモ)にある。人間はこの作業コストにより放棄する。
- LLMは飽きず、クロスリファレンス更新を忘れず、1パスで15ファイルを更新できる。維持コストがほぼゼロ。
- Vannevar BushのMemex(1945)に精神的に近い構想。「誰が維持するか」という問題をLLMが解決する。