このスライドは、Preferred NetworksのいもすによるLLM(大規模言語モデル)に関する包括的な発表資料です。以下、内容のまとまりごとに詳細なサマリーを作成します。
## 1. 発表者紹介・目次(スライド1-3)
- **発表者**: いもす(元競プロer、AtCoder創業、Google Japan→Preferred Networks)
- **発表の目的**: 今後のLLM戦略について参加者に考えてもらうため
- **構成**: LLMの歴史、技術と課題、日本のLLMが必要な理由の3部構成
## 2. LLMの歴史(スライド4-19)
### AIブームの変遷
- **第1次~第3次AIブーム**: 探索アルゴリズム→知識推論→ビッグデータと進化
- **第4次AIブーム(現在)**: 大規模言語モデルが中心
- **情報蓄積の進化**: 数人→数十人→数万人→数千万人で情報入力する時代へ
### 技術基盤の進歩
- **ムーアの法則**: トランジスター数が2年で2倍に増加
- **Huangの法則**: 電力あたりの計算量が2年で3倍に向上
- **深層学習の加速**: 学習計算量が2年で100倍に増加(ムーアの法則を大幅に上回る)
### スケーリング則とLLMの誕生
- **2020年の発見**: 計算資源・データを増やせば性能が改善することが判明
- **創発現象**: 一定規模を超えると想像もできない能力が現れる
- **ChatGPTの衝撃**: 2ヶ月で1億ユーザー獲得、生成AI投資が急拡大
### 社会的影響
- **既存サービスへの影響**: Stack Overflowアクセス半減、Chegg株価急落
- **各分野への展開**: 自動運転(LINGO-1)、ロボット(PaLM-E)への活用
- **リスク議論の変化**: 倫理問題から人類絶滅リスク(Xリスク)への関心移行
## 3. LLMの技術と課題(スライド20-46)
### モデル構造と学習
- **基本構造**: TransformerのDecoder部を使用、次のトークン予測が目的
- **データセットの重要性**: 高品質データは100倍以上の価値、2026年頃にデータ枯渇予測
- **トークン化の課題**: 日本語は英語の3.3倍のトークン数が必要
### 学習プロセス
- **事前学習**: Chinchilla則(パラメータ数の20倍のデータが最適)
- **ファインチューニング**: SFT(教師あり)→RLHF(強化学習)の流れ
- **学習の高速化**: Parallel Layers、Mixture of Expertsなどの技術
### 推論効率の改善
- **計算資源の制約**: パラメータ数が推論コストに直結、GPUメモリ制限
- **高速化技術**: vLLM、DeepSpeed-fastgenで数十倍の高速化実現
- **推論時の工夫**: 温度調整、Top-p/Top-k、Chain of Thought、外部ツール活用
### 技術的課題
- **ベンチマークの難しさ**: プロンプト設計で性能が大きく変化
- **長い文脈の処理**: GPT-4以外は長文脈で精度が大幅低下
- **ライセンス問題**: 商用利用可能な高品質データの不足
## 4. 日本のLLMが必要な理由(スライド47-53)
### 文化・価値観の違い
- **正しさの相対性**: 国によって異なる倫理観・価値観
- **データの偏り**: 特定地域のデータが不足すると誤分類や偏見が発生
- **文化的配慮**: 各国固有の文化・商慣習への理解が必要
### 国家戦略としての重要性
- **主権の観点**: 独自の意思決定を行うためには日本に理解のあるLLMが必要
- **経済競争力**: 国産LLMがないと経済活動の柔軟性・俊敏性が失われる
- **サービス品質**: 競合の有無でサービス品質に大きな差が生じる(地図サービスの例)
### 将来への備え
- **2030年の転換点**: 計算資源律速からデータ蓄積・整理能力律速の時代へ
- **知識の散逸防止**: 高性能LLMを持たないと収集した知識を活用できない
- **持続的開発の必要性**: データが枯渇する前に日本独自のLLM開発体制を構築すべき
## 結論
この発表は、LLMが単なる技術ツールではなく、国家の知的インフラであることを強調しています。特に2030年以降のデータ枯渇時代に向けて、今から日本独自のLLM開発に投資することの重要性を訴えています。技術的な進歩の歴史を踏まえつつ、文化的多様性と国家主権の観点から、各国がそれぞれのLLMを開発することの意義を論じた包括的な内容となっています。