## はじめに
近年、AIを活用したコーディングツールが急速に発展し、プログラマーの生産性向上や開発プロセスの効率化に大きな影響を与えつつあります。これらのツールは、コード補完、チャットアシスタント、コーディングエージェントなど、様々な形態で提供されており、プログラマーの作業をサポートしています。
その中でも、オープンソースのコーディングエージェントである「[Cline](https://github.com/cline/cline)」は、独特のポジションと活発なコミュニティによって注目を集めています。 本記事では、Clineを中心に、現在のAIコーディングツールの動向を探ります。Clineの特徴や利点、そして他のツールとの比較を通じて、AIコーディングツールの現状について考察します。また、Clineのアーキテクチャや実用面、コミュニティの動向についても解説します。
AIコーディングツールは、特に個人のプログラミングの世界に大きな変革をもたらしつつあります。本記事が、読者の皆様にとって、AIコーディングツールの理解を深め、活用するための一助となれば幸いです。
- [はじめに](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%AB)
- [AIコーディングツールの分類](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#AI%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%84%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%88%86%E9%A1%9E)
- [コーディングエージェントの利用イメージ](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8)
- [Cursor](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Cursor)
- [Copilot Edits](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Copilot-Edits)
- [Continue](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Continue)
- [Cline](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Cline)
- [なぜClineに注目するのか](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%81%AA%E3%81%9CCline%E3%81%AB%E6%B3%A8%E7%9B%AE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B)
- [Clineのアーキテクチャ](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Cline%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A3)
- [Clineの実用面](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Cline%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%94%A8%E9%9D%A2)
- [なぜDeepSeekとセットで使っている人が多いのか](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%81%AA%E3%81%9CDeepSeek%E3%81%A8%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A7%E4%BD%BF%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%8B)
- [DeepSeekのコスト感](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#DeepSeek%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E6%84%9F)
- [ローカルLLMでお得に使えるか?](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%ABLLM%E3%81%A7%E3%81%8A%E5%BE%97%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%8B)
- [コミュニティと発展](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%A8%E7%99%BA%E5%B1%95)
- [フォーク版たち:Roo-Cline、Bao Cline、Cool Cline](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E7%89%88%E3%81%9F%E3%81%A1Roo-ClineBao-ClineCool-Cline)
- [なぜフォーク版がたくさんあるのか](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%81%AA%E3%81%9C%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%82%AF%E7%89%88%E3%81%8C%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B)
- [エンタープライズ向けはあるの?](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA%E5%90%91%E3%81%91%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%AE)
- [Clineにベットするべきか?](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#Cline%E3%81%AB%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E3%81%8B)
- [おわりに](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#%E3%81%8A%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%AB)
## AIコーディングツールの分類
AIコーディングツールには3つのカテゴリーがあります。
1. **コード補完ツール**
2. **チャットアシスタント**
3. **コーディングエージェント**
世間のプログラマーが「プログラミングにCopilotを使っています」という時は、[GitHub Copilot](https://github.com/features/copilot)のコード補完機能を指すことが多いです。しかし、AIコーディングツールはコード補完ツールだけではありません。チャットアシスタントやコーディングエージェントもAIコーディングツールの一部です。
以下にそれぞれのカテゴリーの特徴を説明します。
| カテゴリー | 代表的なツール | 特徴 |
| ---------------- | ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | -------------------------------------------------------------------------------- |
| **コード補完ツール** | Copilot、[Cody](https://sourcegraph.com/cody)、[Cursor Tab](https://docs.cursor.com/tab/overview)、Continue | ユーザーが書いているコードの続きをAIが提案する。 |
| **チャットアシスタント** | Copilot Chat、Cursor Chat、Continue | AIがコーディングに関する質問や説明に回答する。ユーザーは質問にソースコードを付与できる。オプション機能として、コードが提案されたらユーザーは結果を適用できる。 |
| **コーディングエージェント** | Cline、Cursor Composer、Copilot Edits、Copilot Workspace[\*1](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#f-fc33d4ae "GitHub Copilot Workspace ファーストインプレッション - laiso") | ユーザーの指示に従ってAIが自動でコーディングを実行する。変更・実行内容が提案され、ユーザーが許可する。 |
補足するとチャットアシスタントについては、エディタの外で**ChatGPT**や**Claude**のユーザーインターフェースを使っている人もいます。典型的な作業フローとしては、ソースコードをコピペしてAIに質問をし、AIからの回答を再度コピペしてエディタのコードに貼り付けます。これらの操作をエディタ内で完結させたものが、チャットアシスタント型のツールです。
一方コーディングエージェント型のツールはユーザーがメッセージを入力するインターフェイスを持つのは同様ですが、返答と一緒にソースコードを追加・編集するためのアクションも返します。
コーディングエージェントの中でも著者が最近とくに注目しているのは、**Cline**です。ClineはVS Codeの拡張機能として提供されており、オープンソースで開発されています。
Clineの話をする前に、まずはコーディングエージェントの利用イメージと他の代表的なAIコーディングツールの現状を整理しておきましょう。
## コーディングエージェントの利用イメージ
以下は[Copilot Edits](https://code.visualstudio.com/docs/copilot/copilot-edits)を利用する時の典型的な動作フローです。
まず右下のテキスト入力欄より「TODOアプリのAPIクライアントを設計してください」と送信しました。

Copilotは「APIクライアントを追加し、Todoの追加と削除をサーバーサイドで行うように変更します。」と返答し、現在編集しているpage.tsxの変更差分を表示します。それをAcceptボタンを押して適用します。

さらに「APIを実装してください。データはメモリ上に保持します。」と指示しました。Copilotは新規にpages/api/todos.tsというファイルを追加して中身を記述します。

このように指示→変更を繰り返します。変更内容を修正して欲しい場合は、その旨をCopilotへ伝えます。変更の補足情報として別のファイルを参照して欲しい時などは、メッセージ入力欄から追加できます。
公式のドキュメントでさらに詳しく説明されています。
[code.visualstudio.com](https://code.visualstudio.com/docs/copilot/copilot-edits)
## Cursor
[www.cursor.com](https://www.cursor.com/)
CursorはAIコーディング専用のエディタです。VS Codeのフォークであり、Cursorのサーバーに独自にトレーニングしたモデルを持っています。加えて、主要なOpenAIやAnthropicなどのモデルプロバイダーのAPIキーを設定して使うこともできます。
先進的な取り組みが多く、著者が初めてエディタ上でコーディングエージェントを実現しているのを見つけたのもCursor Composerでした。最近では、[Shadow Workspace](https://www.cursor.com/blog/shadow-workspace)という隠しElectronウィンドウを用いて、並列にコード編集できる機能を検討しているようです。
独立したソフトウェアサービスなので、サインアップして有料プランにアップグレードすると利用回数が増えるという料金体系になっています。著者が一時期使ってみた感じでは、月20ドルのプランでは利用回数が足りなかったので、さらに+20ドルで追加購入して合計40ドル支払っていました。試用や利用回数が少なければ無料プランでも十分だと思います。
ユーザーの数も多く、オーム社から以下の解説書も出ていたので購入しました。
[](https://www.amazon.co.jp/dp/B0DDSQZ58S?tag=rer-22&linkCode=ogi&th=1&psc=1)
## Copilot Edits
[code.visualstudio.com](https://code.visualstudio.com/docs/copilot/copilot-edits)
**Copilot Edits**は、VS Code拡張機能の**Copilot Chat**の一部で、GitHub公式のツールです。
GitHubのサーバーで管理している**GPT-4o**や**Claude**のモデルを使用します。他のコーディングエージェントの中では機能が最も簡素で、まだプレビュー版です。
GitHubのBusinessプランに加入しているので、現状著者が一番使っているのがCopilot Editsです。
実際に利用してみた感じでは、Copilot Editsは保守的な変更を提案してきます。また、Copilotのコード補完との精度にもギャップがあります。
精度に関しては既存のコードベースで日常的な業務プログラミングのタスクを実行するレベルには達していません。コンテキストに入る情報とその処理能力に限界を感じます。「画面の一部を変更してください」レベルの気軽な指示もその背景にはつもりに積もったコードベースの経緯や設計があります。逆説的に私たちが普段行っているプログラミングタスクは結構な脳のワーキングメモリを消費していることが分かりますね。
しかし新規プロジェクトをボイラープレートにして、機能を継ぎ足していくような用途だとまずまず期待通りに機能します。このため小さいアプリケーションを1からたくさん作る個人のプログラマーにはおすすめできます。
## Continue
[www.continue.dev](https://www.continue.dev/)
**Continue**は、VS Codeの拡張機能であり、JetBrains製IDEにも対応しています。エディタ拡張部分がオープンソースとなっています。
Continueはチャットアシスタントであり、コーディングエージェントではありません。
## Cline
[github.com](https://github.com/cline/cline)
**Cline**は、Saoud Rizwan氏によって開発されたVS Code拡張機能で、元々は**Claude Dev**という名前でした。オープンソースで提供されており、VS Code拡張として利用できます。
Clineはコーディングエージェントのみを提供し、コード補完ツールやチャットアシスタントの機能はありません。そのため、Copilotや**[Cody](https://sourcegraph.com/cody)**と組み合わせて使っている人が多いです。
## なぜClineに注目するのか
それは全ての仕組みがオープンソースソフトウェアであるため、学習に最適だからです。それに、後発なのでMCPサーバー([Model Context Protocol](https://github.com/modelcontextprotocol))の統合など新しいアーキテクチャを採用しており、参考になります。
また、ユーザーコミュニティが活発で変化が早いです。代表的なところでは後述しますが、独自にClineをフォークして配布している人たちがいます。
ちょっとリスキーに見える実験的な機能も積極的に追加されます。たとえば、ファイル読み込み、コード編集、コマンド実行などの操作をCline側で判断して提案します。ユーザーはそれを確認して許可して実行するという体ですが、自動承認モードがあり、ノールックでみんな自動運転気分で実行しています。
ファイル読み書きやコード実行などのアクションごとに自動許可範囲を設定できますが、早晩誰か事故るでしょう。昨年は[Bolt](https://bolt.new/)やCompute Use[\*2](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#f-ff2ba4db "Anthropic Computer Useはどうやって実現されているのか? - laiso")の時に「サンドボックスでコマンドを実行するので安全」というくだりが議論されていましたが、実際にローカルPCで自動実行しまくる便利なツールが登場してしまうと、ユーザーたちの衝動は抑えられないようです。

*ユーザー「このプロジェクトにユニットテストを追加してください」AI「npm installしてもらっていいですか?」*
これに対しては、予期しないコマンドが実行されないように、フォーク版ClineやCursorなどではホワイトリスト方式で実行できるコマンドを設定できるようにする、など検討されているみたいです。

*Cursor YOLO Modeでは許可するコマンドを個別に管理できる*
## Clineのアーキテクチャ
Clineの根幹となるアイデアは、LangChainなどの近年のツールから続いているプレーンテキスト経由のプロンプトエンジニアリングです。コードの編集、ファイルの読み書き、コマンドの実行などのタスクを自動化するために、独自のXML記法で関数呼び出しや手続きを表現します。
LLMがそのプロトコルに沿ってXMLを提案してくるので、Clineはローカルでファイルの読み取りなどの関数を実行し、またLLMに返します。
**replace\_in\_file** ツールの例。これは、「あなた(LLM)に送信しているコンテキストのファイル情報の中で、SEARCH範囲をREPLACEに置き換えるためにXMLを生成してくれ」という論理的なテキスト仕様を宣言したプロンプトです。
```
## replace_in_file
Description: Request to replace sections of content in an existing file using SEARCH/REPLACE blocks that define exact changes to specific parts of the file. This tool should be used when you need to make targeted changes to specific parts of a file.
Parameters:
- path: (required) The path of the file to modify (relative to the current working directory ${cwd.toPosix()})
- diff: (required) One or more SEARCH/REPLACE blocks following this exact format:
\\`\\`\\`
<<<<<<< SEARCH
[exact content to find]
=======
[new content to replace with]
>>>>>>> REPLACE
\\`\\`\\`
...
Usage:
<replace_in_file>
<path>File path here</path>
<diff>
Search and replace blocks here
</diff>
</replace_in_file>
```
このパターンのプレーンテキスト情報がシステムプロンプト[system.ts](https://github.com/cline/cline/blob/a7e9d473752c668d7040d2f6ff9e03123c3334d6/src/core/prompts/system.ts#L30)には大量に定義されており「list\_files ツール: ユーザーPCのディレクトリ内のファイル読み取り」から「execute\_command ツール: シェルで特定のCLIコマンドを実行する」など危うげなものまで多岐にわたります。
## Clineの実用面
### なぜDeepSeekとセットで使っている人が多いのか
元の名前のとうり、ClineはClaudeのモデルをデフォルトにしています。しかし、Clineはモデルを切り替えることができ、[DeepSeek](https://www.deepseek.com/)などの他のモデルを使うこともできます。DeepSeekはOpenAIなどと同じく独立したAIモデルのAPIを提供している企業です。ウェブを見ていると、Clineを使っている人はDeepSeek-V3をセットで使っている人が多いです。
それは**Claude**や**GPT**のAPIを使うと思ったより料金がかかるためです。なぜかというと、入出力トークンが多いためです。コーディング中に自動でLLMが意思決定をして、ファイルの読み込み→編集→読み込み→編集という作業を繰り返すことで、どんどんトークンを消費していきます。
また、前述のとうりそのそも動作させるためのシステムプロンプトも大きいです。Toolの論理的な仕様のテキストがすべて含まれます。ファイルを読み込むアクションが実行された場合場合、基本的にはそのファイルの内容がすべて含まれます。LLMがキャッシュAPIを使える場合は一部のトークンを節約できますが、それでもトークン数は多いです。
他には、各社モデルのプロバイダーのAPIの**Rate Limit**(1分間にNリクエストの制限など)に到達するためです。これも入出力トークンが多いのと、作業中にリクエスト回数も頻発するためです。
まとめると、APIを頻繁に叩くため、みんな安くて性能が良くて穴場のAPIを求めています。今のところその矛先がDeepSeekに向いているのです。
#### DeepSeekのコスト感
**Claude 3.5 Sonnet**の入力は$3.75 / 1Mトークン(キャッシュなしの場合)に対して、**DeepSeek-V3**は$0.27 / 1Mトークン。さらに、**2025年2月8日**までは割引期間なので、$0.07 / 1Mトークンとなります。
- [https://www.anthropic.com/pricing#anthropic-api](https://www.anthropic.com/pricing#anthropic-api)
- [https://api-docs.deepseek.com/quick\_start/pricing](https://api-docs.deepseek.com/quick_start/pricing)
割引期間中はDeepSeek-V3のコストはClaude 3.5 Sonnetの約1/54、終了後は約1/14です。
### ローカルLLMでお得に使えるか?
DeepSeekと同じ水準、すなわちGPT 4oやClaude 3.5 Sonnetのミドルクラスのモデルに匹敵する精度を出すためには、パラメータ数の大きいモデルで推論をする必要があります。そのためにハイスペックマシンが必要です。主にCPU、VRAM、 RAMをちょっといいゲーミングPCレベルで調達する必要があるでしょう。
ユーザーの間では採用するモデルは、今のところ[qwen2.5-coder:32b](https://ollama.com/library/qwen2.5-coder)がベターとされています。Clineは**Ollama**に対応していますのでOllamaのAPI経由でローカルLLMを使えます。しかし、Ollamaレジストリにあるモデルではコンテキストサイズやプロンプトテンプレートの問題で、Clineのコーディングは動作しないため、モデルをビルドする必要があります。カスタムビルドを公開している人もいます(qwen2.5-coder-clineなどのキーワードで検索してください)。著者は以下の記事でllama3.1:8bを自分でビルドして使うことができました。
[zenn.dev](https://zenn.dev/laiso/articles/custom-ollama-model-clinet)
今後、[DeepSeek-V3](https://huggingface.co/deepseek-ai/DeepSeek-V3)の量子化モデルがOllamaに対応します。**llama.cpp**と**Ollama**にDeeSeek-V3向けのアップデートが入ったためです[\*3](https://laiso.hatenablog.com/entry/2025/01/07/#f-6779a6d5 "Add support for DeepSeek V3 by fairydreaming · Pull Request #11049 · ggerganov/llama.cpp")。その時に自分のサーバーで動かすことで、改めて評価する予定です。
## コミュニティと発展
### フォーク版たち:Roo-Cline、Bao Cline、Cool Cline
これらはいわゆるBetter系の細かい機能を追加したサードパーティの拡張です。RooやBaoが独自に追加した機能を、Clineがさらに取り入れているようです。
ライトユーザー向けのキラー機能としては、返答を日本語にする設定があります。それ以外には、パワーユーザー向けの高度な設定項目が多く含まれています。
著者としては、これらの代表的なフォークなら良いのですが、派生してどんどん怪しいフォークにまで手を出す敷居を低くするのは、やめたほうが無難と思います。
- [https://github.com/RooVetGit/Roo-Cline](https://github.com/RooVetGit/Roo-Cline)
- [https://github.com/jnorthrup/Bao-Cline](https://github.com/jnorthrup/Bao-Cline)
- [https://github.com/coolcline/coolcline](https://github.com/coolcline/coolcline)

Roo-Clineで日本語を設定している様子
### なぜフォーク版がたくさんあるのか
このようなフォーク版がたくさん存在する理由は、以下のような要因があります。
- **実装を変更しないとカスタマイズができないため**
カスタマイズするためには、実装自体を変更する必要があり、多くのユーザーが自分用に本体を改造したくなります。著者も改造しています。
- **トークン数とコストが直結しているため**
前述のとおり、トークン数と利用コストが直接関係しており、効率化のために独自の最適化を行うインセンティブがあります。
- **ソースコードが約4000行のTypeScriptでシンプルなため**
ソースコードが比較的短く、シンプルであるため、理解しやすく、変更・拡張が容易です。
- **ClineでClineを変更できるという事情**
Cline自体を使ってClineのコードを変更できるため、開発者が自分で機能追加や修正を行いやすいこのプロジェクト特有の状況もあります。
- **メンテナーがほぼ一人であるため**
メンテナーがほぼ一人で開発を進めていることから、コミュニティによる機能追加や改善が進み、フォークが増えていると考えられます。
## エンタープライズ向けはあるの?
Clineについては、利用者のPCから設定したモデルのAPIにダイレクトにデータが送信されます。中間のサーバーはありません。送信先として**Azure**や**AWS**、**Google Cloud**を設定することができますのでそれらのサービスポリシーに従うことができます。また、**OpenAI**や**Anthropic**もエンタープライズ向けのサービスを提供しているので、一度調べてみると良いでしょう。
CursorやContinueは自社のサーバーで独自のモデルをホストしています。これらを使用する際には、セキュリティを考慮する必要があります。サイトには「問い合わせをしてください」と書かれています。
**DeepSeek**については、中国企業であることからデータの取り扱いを懸念する声もあります。筆者は使用していないため、詳しい読者がいればコメントをお寄せください。
## Clineにベットするべきか?
ベットする必要はありません。
プログラミングやフレームワークでも、このような製品のトレンドが勃発すると、どれか一つを選んで学習コストを投下することを他人に判断してほしいという勢力が出てくるのが常です。
関心があるのなら**Clineを実現するための技術を理解すること**をおすすめします。どのツールでもいいのでまず自分で試して、どうやってこれが実現されているのかを想像できると技術評価の判断に不安がなくなります。
Clineがやっていることは他のツールでも実現可能です。Clineがオープンソースであるため、その仕組みを知ることができます。
極論を言えば、Clineが行っていることは、我々が手動で同じことを**ChatGPT**に入力し続ければ実行できます。そもそも、近年のコーディングエージェントやプログラミング自動化パイプラインは**[LangChain](https://www.langchain.com/)**などの世代から続いており、それがエディタに統合され、モデルのAPIの機能や性能が豊富になって前提が変わり、新たな選択肢が取れるようになった、というだけの話です。
## おわりに
本記事では、Clineを中心にAIコーディングツールの現状を紹介しました。
まとめると、AIコーディングツールは、コード補完ツール、チャットアシスタント、コーディングエージェントの3つのカテゴリーに分類され、最近はコーディングエージェント型のツール開発が活発です。
これらをユーザーとして体験したい場合はCursorやCopilot Editsから導入するといいでしょう。
Clineはオープンソースであり、新しいアーキテクチャを採用しているため、学習や研究に最適なツールと言えます。 補足として、著者は**[Devin](https://devin.ai/)**や[Windsurf](https://codeium.com/blog/windsurf)、[Aider](https://github.com/Aider-AI/aider)など、カバーできていないツールも多く存在します。[o1 pro](https://openai.com/index/introducing-chatgpt-pro/)などの昨今の高額なプライシングの推論モデルも、まだ十分に試せていません。
根本的に、これらのAIコーディングツールの進化は、「ググってStack Overflowにあったコードをコピペする」コピペプログラミングを高度に自動化することです。しかし興味深いのは、今までコピペプログラミングにさえ手を出してこなかった人たちが、AIコーディングツールを使ってプログラミングを始めていることです。しかも、そういう人たちでも、課金すればするだけ成果が出る。そして、プログラミングを勉強することでコスト削減につながってしまうという構造が確立しているのも素晴らしいことです。
高性能な推論モデルによって解くべき問題は、実は多くなく、現行のモデルで十分だという議論があります。これを聞いたとき、プログラマーの業務でも高度なアルゴリズムや計算問題を活用する現場は一握りであることを思い出しました。AIコーディングツールによってプログラマーの母数は増えるでしょうが、果たして単純な業務プログラミングを満たすレベルになるのかは未知数です。逆に、コードを書いても解決できない領域が今より浮き彫りになるかもしれません。
また、このような自動化は学習や教育には不向きとする意見もあります。著者も専門教育を受けず、趣味と現場でプログラミングを覚えた人間なので、プログラミングの教育がどう変わるかは興味深いところです。希望的な観測では、新たなLLMネイティブな世代が自分たち向けの学習方法を確立してくれることを期待しています。
著者はもともとコーディング自動化ツールに関心がありました。昨今のAIコーディングツールの進化には目を見張るものがあり、エキサイティングです。
ただ、Clineに限らず、ユーザーが結構際どいことを行なっているように見えます。Web 2.0でAPIでマッシュアップをしていた時代に、APIの外部呼び出しの全能感からか、スクリプトキディ化する人が多かったことを思い出させます。実際にX(旧Twitter)で観測するユーザーたちも、今回のAIコーディングツールの進化でも同じような感じがします。
**AIコーディングツールのご利用は計画的に。**